現に、名目GDPが4%で成長していれば、ほとんど財政再建ができていただろう。
名目GDPが毎年4%で成長していれば、500兆円の名目GDPは毎年20兆円以上のペースで増大していく。
一方、公債発行額はわずかずつでも減少していくのだから、公債残高の名目GDP比率は低下していく。
デフレによる不況さえなければ、財政赤字を心配することはないという状況がつくれたはずだ。
そもそも、デフレによって生まれた低金利こそが国債の増発を可能にし、財政赤字を拡大させたのである。
90年代以降、金利はつねに下がっていた。
国債発行額は増大していったが、国債の金利払いは低下していった。
その結果、国債費(金利払い+償還費)は微減ないし安定しているという状況が続いていた。
このことが財政危機の認識を遅らせ、国債残高を累増させたのではないだろうか。
デフレでなければ金利はインフレ率分(たとえば2%)は高く、そのことが毎年の国債費の減少に歯止めをかけ、財政危機をより鋭く認識させることになったのではないだろうか。
そもそも、政府の会計とは、毎年のフローの収支しか見ていないものである。
ストックの債務と債権を見て、きちんと行動するように要求すること自体が無理である。
金繰りがつけばよいというのが日本の大部分の企業の行動であり、それ以上のことを政府に期待するのは虚しいことだと認識するしかない。
90年代の低成長は、日本が構造改革に遅れたためだという議論は無内容である。
お札を刷っても物価は上がらず、上がりだしたらとまらないという反論はナンセンスである。
しかし、長いデフレは、デフレの終馬に多少の障害をつくりだしてしまった。
デフレによって物価が下がり、景気が悪化し、その結果、日本には世界史的な名目低金利が生まれた。
景気対策と金利低下によって、膨大な国債が発行されるようになった。
その国債を資金運用難に悩む銀行が大量に保有するようになった。
この状況で、デフレを阻止するために、大胆な国債の買いオペ増額を行ったらどうなるだろうか。
金融緩和によって、名目金利が上昇した場合、長期債の価格が下落する。
長期債を保有している金融機関のバランスシートが殿損する危険がある。
すなわち、N銀行がインフレ・ターゲット政策を採用し、消費者物価上昇率が2%になるまで断固として国債の買い切りオペを続ければ、マネーサプライが上昇し、実質金利が下がるが、やがて景気が回復し、物価も名目金利も上昇する。
名目金利が上昇すれば、国債価格が下落する。
銀行が多大な国債を抱えている現状では、それによって多くの銀行は損失を被るかもしれない。
まず、事実認識として、国内銀行(都銀、信託、地銀、第二地銀)平均では、そう大したことにはなりそうにない。
国内銀行の資産749兆円のうち、国債は73兆6000億円で全資産の9・8%を占めるにすぎない(N銀行「資金循環勘定」2003年3月末)。
1%の10年物国債を残存期間10年でもっていて、金利が5%に急上昇するというありえない状況を考えても、国債の下落率は3割である。
すなわち、平均では総資産の3%の減少にすぎない。
しかも、平均残存期間が10年ということは考えられない。
5年とすれば下落率は半分強で、総資産の1・5%余の下落率にすぎない。
銀行の資産の大部分は貸し出しで、その金額は477兆円である。
デフレが収まり、景気回復の結果、金利が上がるなら、銀行の貸出先企業の経営は好転し、普通の貸出資産の健全度は格段に上昇するはずだ。
すなわち、普通の銀行を考えれば、金利が上がったときには、銀行の経営状態はよくなっているはずである。
もちろん、普通でない銀行もあるかもしれない。
デフレ期待が消滅すれば、支出が拡大し、実物資産の価格が上昇し、実質賃金が低下しても雇用は拡大する。
要するに、景気が好転する。
もちろん、デフレを解決しても、日本経済が抱える長期的構造問題はなんら解決できない。
しかし、それでも、80年代前半のまともな状況にもどったほうがましである。
逆に、大胆な金融緩和政策への転換を行わないで、いつまでもデフレが続く場合を考えてない。
銀行を守るためにいつまでデフレを続けるのか銀行ではなくて、経済全体のことを考えれば、銀行が損をするからデフレを終わらすことができないというのはナンセンスである。
国民の経済水準は、国債価格に依存するわけではっているということは、日本経済が永久に不況であり、永久に金利が上がらないと思っている銀行だ。
金融政策は、普通の人びとや普通の企業、普通の銀行のためになされるべきもので、そんな奇妙な銀行のためになされるものではないと思いたい。
私は、大部分の銀行はそんな奇妙な銀行ではないと思いたいのだが、銀行に雇われているエコノミストが盛んに金利上昇を心配しているので、そんなに奇妙な銀行が多いのかと心配になってしまう。
物価が下落すれば債務の実質価値が増大し、不良債権はいくらでも増えていく。
景気はいつまでも回復せず、銀行は最終的にはすべて破綻してしまうだろう。
銀行のみならず、財政も年金も破綻してしまうだろう。
銀行がいずれ破綻しなければならないとしたら、いま、わずかな銀行が破綻したほうがずっとよい。
しかも、国債を大量に抱えている銀行が破綻したほうがずっとよい。
銀行が破綻して困るのは、銀行の貸出先の企業が雇用を抱えているからだ。
国債を大量に抱えている銀行は、貸出先が少なく、破綻しても雇用問題が軽微に終わる銀行だ。
将来の大きな損失を避けるために、いま、小さな損失に耐えるほうがましではないだろうか。
しかも、破綻するのは、大きな雇用問題を抱えていない銀行である。
これこそが、理想的な構造改革ではないだろうか。
構造改革とは空語であり、デフレ脱却と過大な銀行部門の整理という真の構造改革を行わないための口実である。
過大な銀行部門が整理されれば、資本市場が発展するだろう。
資本調達は、銀行を中心としたピラミッド型の硬直的なシステムではなくて、水平的な、より柔軟なシステムによって行われるようになるだろう。
また、銀行のような官僚的大組織の減少は、人材の流動化につながり、新しい企業の発生を促すだろう。
これこそが、構造改革を標傍している人びとが望んでいる経済社会の姿では金利を上昇させたくないのが本音名目金利の上昇からくる国債価格の下落によって損失を被るのは、日本経済全体のなかではわずかな部門にすぎない。
しかし、景気が好転すれば、必ず金利が上昇する。
金利を上昇させないためには、日本を永久に不況にしておくしかない。
これが、デフレを終わらせない真の理由である(以下は、Hよる)。
みなさまは、この説を信じないかもしれない。
日本経済全体のなかの一部の金融機関の、そのまたごく一部の利益によって日本の金融政策がなされている、と私が主張しているからだ。
しかし、日本の政策決定においては、経済のごくわずかな部門がつねに大きな政策のあり方を決定してきた。
中国のWTO(世界貿易機関)加盟やアジアの自由貿易協定において、日本は農業部門の利害によって世界のなかでリーダーシップをとれずにきた。
このような例は、いくらでもあげることができる。
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